【福祉と暮らしの安心制度編】⑤
老後の安心につながる「成年後見制度」
高齢の親や家族の介護が始まると、
医療や介護サービスの契約、銀行手続き、財産管理など、
本人の判断が必要な場面が突然増えていきます。
しかし、認知症や病気が進行して
「自分で判断することが難しくなる」
という状況が訪れると、日常の手続きが進められなくなり、
周囲の家族や支援者にも大きな負担がかかります。
そんなときに本人の生活と権利を守るために利用できるのが、
「成年後見制度」 です。
成年後見制度とは?
判断能力が不十分になった方の生活や財産を守るため、
家庭裁判所が選ぶ「後見人」が本人を支える公的な制度です。
後見人は、本人の意思を尊重しながら、
必要な契約や手続き、財産管理を代わりに行う役割を担います。
成年後見制度の役割
① 契約や手続きをサポート
医療や介護の契約、施設入所、銀行手続きなど、
本人が理解・判断することが難しい場面を支援します。
② 財産管理を適切に行う
預貯金の管理、家賃や光熱費の支払い、
生活費の調整など、生活の基盤を整えます。
③ 悪質商法やトラブルから守る
高齢者をねらう詐欺や過剰な契約から、
後見人が本人を守る役割も果たします。
成年後見制度の種類
成年後見制度には、次の2つの仕組みがあります。
● 法定後見制度
判断能力がすでに低下している場合に利用します。
本人の状態に応じて、
- 後見(判断能力がほぼない)
- 保佐(著しく不十分)
- 補助(一部が不十分)
の3類型に分かれ、支援の範囲が決まります。
● 任意後見制度
本人が元気なうちに、
「将来、自分の後見人になってほしい人」を
あらかじめ契約で決めておく制度です。
準備しておくことで、突然の変化にも安心して備えられます。
申立てはどうすればいい?
成年後見制度を利用するには、
家庭裁判所への「申立て」が必要です。
申立てできるのは、
- 本人
- 配偶者
- 4親等内の親族
- 市町村長
などが対象です。
地域包括支援センターや社会福祉協議会が
相談窓口としてサポートしてくれる地域もあります。
費用について知っておきたいこと
制度の利用には
- 申立費用(数千円〜1万円程度の実費)
- 診断書の費用
- 後見人への報酬(月1万円〜2万円前後が一般的)
などがかかります。 自治体によっては、
「成年後見制度利用支援事業」 として
費用の一部を助成しているケースもあります。
成年後見制度が必要になる場面
次のようなサインが見られたら、
制度利用を検討するタイミングかもしれません。
- 判断力の低下で契約内容を理解できない
- 銀行や役所の手続きを自分でできない
- 悪質商法や訪問販売の被害に遭ったことがある
- 誰かの助けがないと生活費の管理が難しくなっている
- 介護サービスの契約手続きが進まない
成年後見制度のメリット・デメリット
▼メリット
- 契約や財産管理を安全に進められる
- 適切な支援につながりやすい
- 家族の負担が軽減される
- 悪質商法から守られる
▼デメリット
- 後見人報酬が継続的に必要
- 原則として中止や変更がしにくい
- 家族が後見人になれない場合もある
制度の特徴を理解した上で、
必要性やタイミングを見極めることが大切です。
どこに相談すればいい?
- 地域包括支援センター
- 市役所・町村役場の介護福祉窓口
- 社会福祉協議会(権利擁護センター)
- 司法書士・弁護士などの専門家
身近な窓口で相談できるため、
「心配になった時点」で早めに相談することが安心につながります。
まとめ
成年後見制度は、
本人の意思を尊重しながら、生活を守るための大切な仕組み です。
老後の備えとして知っておくことで、
いざというときに迷わず必要な支援につながれます。
不安を抱え込む前に、まずは身近な相談窓口へ。
早めの相談が、安心して暮らす未来へ導きます。
